Under The Darkness
「なに作ろおもてんの?」
「んー、悠宇チャンプルー好きやったやろ? 今の時期ゴーヤ売ってへんからお麩で作ろ思てな」
お麩のチャンプルーは冬場によく作る。
遊びに来た悠宇や栞ちゃんにもよく振る舞っていたものだった。
「おお! あれか! めっちゃ好きやっ」
「出来るまでそこで大人し待っとり」
備え付けのソファを指差して、私に纏わり付いてくる悠宇に、邪魔すんなとビシッと指示する。
「ふふっ。なんかえーなー」
ソファに深く腰掛けながら、にやけた顔で悠宇は感慨深げに呟く。
私はエプロンを腰に巻き付けながら、「なにが?」と振り返った。
「新婚さんみたいやん?」
ニマニマ口元をだらしなく緩ませながらの悠宇の言葉に、私も負けじとニヤリと嗤う。
「せやな。相手が悠宇なんがアレやけど」
「なんやねん。オレじゃあかんのか? 不服なんか!?」
焦った声を上げる悠宇に、私はふふんと片唇を歪ませた。
「だって、悠宇やで? 着メロ阪神タイガースやで? 服、似合とるけど奇抜すぎて一緒におるんたまに辛い時あんねんで? なんやのツギハギだらけなあのスーツ。デザインにしてもあのチョイスはないな、ないない。ああ、そうや、小学校ん時、『お袋、雑穀米だけはやめてくれえ!』って寝言言うてたしな? どんなけ雑穀米食べてんねんって栞ちゃんと爆笑したし。そんな悠宇と新婚とかマジでありえんわー」
思い出しながらふふっと笑う。
そんな私に、悠宇はむっつりと唇を尖らせながら、
「ええやないか。それが個性っちゅうもんやろが。それにな、言わせてもらうけどな、雑穀米はコメちゃうねん。あれは鳥が食うやっちゃ」
なんて自論を展開し出す。
「ははっ。今日は雑穀米決定やな。せっかく夕ご飯ごちそうしたろ思てんのに残したら許さんで?」
そんなん無理やしマジヤメテッ! と、悲壮感を漂わせながら擦り寄ってくる悠宇の情けない顔を見て、私は久しぶりにお腹を抱えて爆笑した。