Under The Darkness




「そ、そんなん」


 悠宇の掌が私の頬を撫でる。

 悠宇の双眸が真剣さを帯び、私から言葉を奪う。


「身体やない。みぃちゃんの心が欲しい」


 京介君とは違う、温かな掌が私の頬を包み込む。

 優しげに囁かれ、身体の強ばりが解けそうになる。けれど、彼の内に燻《くすぶ》る烈しい恋情に全身が竦み上がってしまう。


「みぃちゃん、美里。家族愛やない。恋人として、オレのこと好きになって」


「ゆ、悠宇」


 悠宇の顔がくしゃりと歪む。

 泣き出す寸前の表情だった。

 悠宇は私が離れてゆくかも知れないと恐れているんだろう。

 私は、自分に好意を示した男をことごとく排除してきた。

 それは、彼らが私を傷つける存在だったから。恐怖の対象だったから。

 彼らの言葉を一切聞かず、非情なまでに排除してきたのは、私だ。


 でも。


 悠宇は私を傷つけない。

 今まで一緒にいて、私が一番よく知っている。

 私の汚い部分を知っても、幻滅していたとしても、それでもなお、私を求めてくれているのなら。

 私を優しく包み込んでくれる彼のそばにいること。

 それが、正しい選択に思えてくる。

 まるでぬるま湯に浸るような今までの心地よい関係から、彼が求める関係に姿を変えても、彼だけはきっと変わらないだろう。


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