Under The Darkness



 いつも私を守ってくれていた悠宇。

 私が泣いたら一緒になって泣いてくれた悠宇。

 悔しがってくれた悠宇。


 彼の傍にいるのが一番いいのかも知れないと、心が傾き出す。

 心に負った傷を癒やしてくれる存在が、悠宇と栞ちゃんだった。

 そんな彼に、私が心を寄せてしまうことは、きっと自然なことなんだろう。

 彼となら、きっと穏やかな時間を過ごせる。

 悠宇の気持ちに流されそうになった時、ふと京介君の顔が脳裏を過ぎった。


 切れそうなほどに鋭利な、けれど、翳《かげり》のある憂いを帯びた黒曜石の眸。

 私を翻弄させる言葉ばかりを紡ぐ、酷薄な唇。

 誰もが振り向く端麗な美貌で、良心の呵責無く平然と他を欺く冷酷な男。

 彼はまるで、人を惑わせ堕落させる悪魔のよう。

 ――――血の繋がった私の異母弟。

 私を憎んでいると言いながら、二度も助けてくれた、どこか危うい矛盾を孕んだ男。

 私に苦痛を与えるためだけに、京介君は私を助けたのだと言った。

 彼は残酷な言葉で私を切り裂きながら、私の身体を戸惑うほどの優しさで奪う。


 憎しみの言葉で私を抉り、愛に似た優しさで私の心に食い込んでくる、どうしようもなく私を翻弄する男。

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