Under The Darkness







「オレが一番美里に近い存在やった。今までは、オレ以上に美里に近い男はおらんかった。美里、オレ、怖いんや。身体だけでなく、美里の心まであの男に奪われるんちゃうかって」


「……悠宇?」


 悠宇は私の心が京介君に傾きかけている。

 そう感じているんだろうか。

 それは違う。

 確かに、心に深く食い込んでいるのは間違いない。

 けれどそれは、私の意思を無視した暴力という形で、だ。

 『愛』に頑なな私を従順させようと立ち塞がり、頑強な鎖で封印した私の心をこじ開けようとする、彼はいわば『敵』。

 悠宇が思うように、私が京介君に心を許すことなんて、この先きっとない。

 母親を私達母子のせいで失った京介君の心の傷を、何とか癒やせればいいなって思ったけれど。

 でも、私にはそれが出来そうもない。

 京介君が望むように、彼の言うがまま恭順することは、彼の所有物になることは、烈しく私の矜持を、誇りを、傷つけ貶める。

 私はそれを到底享受出来ない。

 考えに沈んでいた私を、悠宇が探るような目で見つめてくる。

 私の中にある答えを見極めるように。

< 229 / 312 >

この作品をシェア

pagetop