Under The Darkness
私は感じたことのなかった『男』を悠宇に感じて、心がザワリと細波《さざなみ》を立てた。今まで感じることのなかった『恐怖』を彼に感じて、こくりと喉が鳴る。
「オレ、ずっと待つつもりやった。美里がオレを受け入れてくれるまで。でも、そんな悠長なこと、もう言うてられん」
悠宇は苦しそうに眉根を寄せて頭を振った。
このまま彼に添うてしまおうか。
他の男より、悠宇は私にずっと近い。
でも。
私の中の何かが、烈しく私を躊躇させる。
「美里、愛してる」
その言葉に瞠目した。
悠宇の告白は、激しく私を動揺させる。
私に向けられる『愛』は、私を引き裂く暴力の合図。
歪曲した私の心は、『愛』を拒む。
受け入れることが出来ない。
どうしていいか答えが見つからない。
吐露される悠宇の言葉に心が揺れる。
でも、その奥底で激しく拒絶していた。
悠宇の顔が近付いてきて、唇に触れようとする。
私の唇が小さく痙攣した。
――コワイ。
家族のように近しかった彼が、『男』に姿を変えることが、怖かった。
――ピンポンピンポンピンポン
ハッと悠宇の動きが止まる。
玄関ベルがけたたましく鳴り響く。