Under The Darkness

14



 豪に四肢を拘束され、殴られ、衆人環視の中犯された暴力の記憶が、鮮烈に瞼の裏側に蘇る。

 豪の姿が京介君と被った。

 京介君の存在が、豪にされた行為を、恐れを飲み込み凌駕する。

 私の意識は完全に『無理やり壊される恐怖』に支配されてしまう。


「助け……っ、悠宇っ、ゆ、ぐっ」


「黙れ」


 大きな手で口を塞がれたまま、私は目の前の男を見上げた。


「本当に……腹立たしい」


 憤怒の中に狂気めいた殺気がこもり、そして、ジリジリとした焦燥が京介君の双眸を苦しげに歪めさせる。

 私は大きく震え出す体を止めることが出来なくて。

 恐怖で引き攣った瞳からは、次々と新しい涙が溢れ、こぼれ落ちていった。


「でも、その泣き顔には堪らなくそそられる」


 眸に妬心と苛立ちを浮かべたまま、京介君は喉の奥で低く嗤った。


「……これは復讐だと言うことを忘れるな。私達を不幸にしたお前が償うべき代償。母を殺し、人一人の人生を狂わせてしまった」

 
「あぁっ」


 京介君はもう片方の手で私の手首を掴み、後ろに捻じ上げた。



「……私を狂わせてしまったのだから」



 彼の唇が扇情的に吊り上がる。冷たくて艶めかしい笑みの中に浮かぶ、野蛮な獣。

 
 抵抗する私の口を塞いだまま、ズルズルと引きずる様にしてベッドの上へと突き飛ばした。

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