Under The Darkness
「私から逃げることは出来ない」
私に言い聞かせるような強い口調。
自分の所有物だと言わんばかりに私を見下ろし、覆い被さってくる。
逃げ道を奪われ、追い詰められてゆく。
「や、やめえ! さ、わるな! やめてっ、京介君!」
彼は豪ではない。けれど、豪とは違う感情で、同じ事をしようとしている。
豪は『愛』で私を陵辱し、誇りも何もかもを踏みにじり、京介君は『憎しみ』で私をがんじがらめに縛り付ける。
相反する思いでもって、ふたりの男は全く同じ行為を私に強いる。
京介君は私の異母弟、同じ血を分けているはずなのに。それでも私の身体を自由にしようとする想いの強さに、独占欲の深さに、飲み込まれてしまいそうになる。
京介君とだけは、こんなことしたくはない。してはいけない。
もうすでにこの身体は彼の意のままにされてしまったけれど、やはり強い拒絶が心を占める。
「ふふ、怯えてますね。犯されることへの恐怖ですか? それとも」
京介君は私の上に覆いかぶさると、艶めいた瞳で私を捕らえ――――。
「……禁忌を侵すことへの、背徳、でしょうか?」
その台詞に、私の体はビクッと強張ってしまう。
まるで私の葛藤を見抜いていたかのようなセリフ。
動揺する私を見て、京介君はスッと目を細めて嘲笑した。
「そんなもの捨ててしまいなさい」
顔を私の耳元まで寄せ、蠱惑的な低音で囁く。
「ゲームは始まったんです。貴女にはもう、私と共に――堕落する道しか残されていない」
そのまま私の耳をねっとりと舐め上げ、喉の奥でククッと嗤った。