Under The Darkness
「憎しみが薄れてくれたらええなって思う。けど、私には意思を殺して人形になるんは無理そうやから」
京介君の望むように生きることは、私には無理だ。
でも、このままだったら間違いなく昔と同じ道を辿ってしまう。
心を閉ざしてしまう前に、辛く苦しい現状から逃れるために、心はそれを望んでしまうだろう。
私の意思とは関係なく。
「昔みたいに、心がそれを望んだら、私は自分を止められへんのよ」
私は京介君から目を逸らさずに話した。
苦しげに目を眇める京介君を捕らえるように。
「私な、金城さんみたいな写真家になるんが夢やねん。昔の夢は、普通に恋とかしてみたかったし恋人作って登下校一緒に帰ったりとかしてみたかった。他の子がしてるみたいに。でも、願ったそれら『普通』なことは、全部叶わんかったんよ」
ママにも悠宇にも栞ちゃんにも。
誰にも吐露したことがなかった心の奥にあるもの。
私はそれを京介君に曝した。
そうすることで、彼がどういう答えを導き出すのか知りたかった。
彼が、本当は私をどうしたいのかを知りたかった。
「いつも不条理な暴力を前にして叩き潰されるん。目の前にあるのに。いっつも手が届かん」