Under The Darkness


 圧倒的な強さを前に、私のような弱い『女』なんて為す術もない。

 意思を殺して生きることは、それは生きながらにして死ぬことと同義だった。

 静かな部屋には私の声と彼の息遣いだけしか聞こえてこない。

 京介君の本心を隠す能面が崩れようとしていた。


「京介君は私を身動き取れんほどに縛りたんやろ? 縛ったらええ。気が済むまで好きなだけ。でも、私はそんな状態で長くはもたん」


「そんなことはさせない。手足を縛り付けても、絶対」


「京介君は私の人形が欲しいだけ? せやったら、私の死体、ホルマリン漬けにでもして観賞してたらええやない」


 私は嗤った。

 そこまで彼が異常なら、このまま殺されるだろうなって思ったから。

 夢に手が届く前に壊されるのは辛いけれど、憎まれた状態が延々続くのはもっと苦痛だと思うから。

 ならば、もういいや。そう自暴自棄になってしまう自分がいる。


「……そんなものを望むと思うのか」


 爆発する寸前のような怒りを湛え、ふざけるなとばかりに睨まれる。

 けれど、私の瞳を捕らえた途端、見たくないとでも言うように京介君は私から顔を逸らした。


 そして、苦しげに瞼をぎゅっと閉ざす。


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