Under The Darkness
「京介君、アンタが欲しいもんは何」
「……昔から、望むのは、欲しいものは、ひとつだけ」
絞り出すような苦しげな声。
薄く開いた京介君の双眸が自嘲の色を刷く。
私は目を瞠った。
「――貴女は昔、告白してきた男を手酷く振りましたね? 父さんと大阪を訪れた時、偶然その様子を見たんです。貴女が恐怖に怯えた目で、その男を全身で拒絶する様を。それは美里さん、貴女が恋愛感情の絡む愛に対して、何故か強い恐怖を抱いていると――私にはそう見えた。だから、私は」
京介君はそこで言葉を句切った。
告げることを躊躇っているように唇を引き結び、真摯な眼差しが私を捉える。
「別の方法をとったのです」
「別の方法?」
京介君は頷いた。
「美里さんが嫌悪する『愛』ではない感情で、貴女の全てを絡め取るために」
京介君の眸に揺らめくもの。
それは、憎しみとは違う感情に思えた。
京介君が言う『愛』ではない感情。
それは、まさか。
――『憎しみ』?
「京介君、アンタ」
「これほどまでに執着したオンナは、昔からひとりしかいません。……貴女だけです」