Under The Darkness
私はギクリとした。
「京介君、アンタ、まさか」
「……あの男が大切なら、全力で彼を拒否しなさい」
その言葉に目の前が暗くなる。
悠宇を人質に、私に言うことを聞けと言っているのだと悟り、狡猾に笑む京介君の双眸から目が離せなくなる。
悠宇の掴んだ夢を、潰させるわけにはいかなかった。
モデルをしているのも、芸能界で俳優の道に進むための階段だと語っていた悠宇の夢を、奪うことなどさせるものか。
真っ正面から京介君を見据え、私は言い放った。
「わかった。言う通りにする。だから……これ以上余計なことしたら、アンタを許さん」
京介君に乱暴された時以上に、彼に対して激しい憎しみを覚える。
刹那、京介君の双眸に、ガラスがひび割れるような亀裂が走った。けれど、次の瞬間には、嗜虐に歪んだ官能的な笑みに取って代わる。
ゾッと身体が竦む。
私は逃げるように京介君から目を背けると、悠宇に向き直り、内心の嵐をひた隠してにこっと微笑んだ。
「ごめん、悠宇! 私ら、メイクさんとこ行ってくるわ。悠宇、先いっといてくれへん?」
「……え? なに? みぃちゃん?」
信じられないものを見るような悠宇の眸。
心がどんよりと淀み、冷たくなるのがわかった。
「ごめん、悠宇! ほな、後でな!」
私は京介君の腕を掴むと、悠宇の前から一目散に駆け出した。