Under The Darkness
「ああ、そんな顔しないで下さい。貴女たちのせいじゃない。母は、心を病んでいましたからね。被害妄想に取り憑かれて、最後は私の目の前で首をかっ切ってしまうほどに、心が蝕まれていました」
息子の前で、首をかっ切った……って……。
あまりの事実に、全身の血液が急速に足先へと落ちてゆくのが分かった。
凄惨な現場を目撃したとは思えないほど冷静に、全ての感情を隠した嘘の笑顔で、何でもないことのように淡々と話す京介君に、私はぞっと戦慄した。
柔らかく微笑んでいるんだけど、目が全く笑っていなかった。
眼鏡の奥の双眸が、一瞬鋭い光を放った気がして。
京介君の顔が、私を殺そうとした鬼の影と重なった。
似てるんだ、京介君。私を殺そうとした、彼のお母さんに。
「ふふっ。本当に貴女、思ったことが顔に出ますよね。私のことが怖いと思いました? 初めてこの家に来たときのこと覚えていたんですね」
――母に殺されそうになったこと。
囁く声が、甘くて。
あの時の記憶がフラッシュバックする。
この時初めて、私は京介君が心底怖いと思った。