Under The Darkness




 私はたくさんの光の中、可愛らしい猫足のチェアに座っていた。

 フリルがふんだんに施された純白のブラウスには、黒いロザリオ風のリボンネックレスがアクセントになっていて。胸下から腰辺りを絞るようにデザインされたシフォンスカートは、腰下からふんわりと柔らかい広がりを見せ、潮風に嬲られ時折ふわりと舞い上がる。その裾からは純白のフリルが豪華にのぞき、頭には同じフリルのヘッドドレスが飾られていて。

 これは、俗に言うゴスロリに近い衣装ではないかと私は無表情のまま思った。

 私は人形という設定らしい。

 無表情を貫け、そう金城さんに指示された。

 そんな私の隣に立つのは、タキシードに似たデザインの衣装に身を包む悠宇。

 彼は、人形に恋をした紳士、という設定だそうだ。

 椅子に座る私に、腰を屈め顔を寄せたまま、悠宇は片唇をつり上げた笑みを刻む。



「悠宇、もっと美里に寄って。頬にキスする寸前の距離を保て。美里、そのまま無表情を貫け」


 金城さんの指示に、私達は従う。

 極力表情が顔に出ないよう、金城さんの背後にいる京介君を瞳に映さないよう、波紋を広げる心に蓋をして、指示通り私は人形になる。


「なんであの男がここにおんねん。アイツ、まさかマンションに来よったんか!?」


 表情は崩さず、声を潜めながら、悠宇は私に質問してきた。


「朝来たん。で、撮影のこと聞いて着いて来たんや」


 無表情のまま、私は嘘を吐いた。

 京介君と出逢ってから、私、悠宇にどれだけ嘘を吐いたんだろう。

 そんなことを考えてたら、無表情がゆっくりと崩れていって、金城さんの怒声が飛んだ。


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