Under The Darkness
「本当に、蛭《ヒル》のような男ですね。美里さんの苦しみに付け込んで、優しい顔をして油断させ、最後は自分にしか興味を抱かないよう誘導してゆく。さすがです」
くくっと冷笑を浮かべながら、京介君は続けた。
「けれど、自分は美里さんに拒絶されてきた男達とは違うと豪語する口で、同じように穢したいと願っていたくせに。だからこそ、美里さんを抱いた私に対して激しい嫉妬を向けてくる。私と何ら変わらない貴様如きが、薄っぺらな『愛』を告げたところで、彼女の心は傾きなどしない」
京介君は怒りで色が薄くなった眸を悠宇へと向けた。
「嫉妬して何が悪い? それに、美里が今後、俺を受け入れるかどうかなんてわからん。けどな、お前も気付いてるんやろ? 美里の心ん中で一番それに近い場所におる男は、オレ一人だけやって」
――だからお前は、オレをそこまで敵視して排除しようとするんやろ? 奪われるとしたら、それはオレ以外におらんから。
くくっと悠宇は嗤う。
一気に京介君の顔が毛色ばんだ。
「……本当に、忌々しい男」
私の身体が京介君に突き飛ばされる。
私は椅子に足を取られ地面に倒れ込んだ。
柔らかな芝生の上に身体を沈めながら、バッと悠宇と京介君を仰ぎ見る。
京介君の腕がスッと持ち上がるのを見て、悠宇が殴られる!? そう思いまろぶように立ち上がった。
けれど、立ち上がるより早く京介君は悠宇を殴りつけていた。
悠宇は咄嗟に両手でブロックしたが、体勢は大きく崩れ、勢いよく後ろに吹き飛ばされてしまう。
「……チッ。こんのヤクザもんが! 貴様なんかに、美里、絶対渡すか!!」