Under The Darkness




 ここからが地獄の時間だと、身体の上を這い回る指と舌先を意識から引き剥がし、思った。

 苦痛しかない時間など、さっさと過ぎてしまえばいいのに。早送りするみたいに、終われ、終われと頭の中で呪文のように繰り返す。

 下着も切り裂かれ、裸に剝かれて、私の身体が拓かされる。

 男の中心を私の身体に感じた時、昔見た切り裂きジャックを題材にした映画が、突然脳裏に蘇った。

 私は、あの映画に出ていた娼婦のように、切り裂かれるんだ。


 諦めが身体を満たす中、いきなり耳を劈く銃声と、扉を蹴破る破壊音が響き渡った。

 部屋の男達がハッと動きを止め、扉の外に耳を澄ませる。

 次々と扉を蹴破る破壊音が、あっという間に近付いてきて。

 この部屋の扉が、凄まじい破壊音と共に蝶番ごと蹴破られた。

 勢いよく吹っ飛んだ扉を、男達は制止したまま呆然と見つめる。



「……美里さん!」


 ハッと目を開いた。

 壊された扉から見えたのは、凄まじい怒りを湛えた全身黒づくめな男。


 彼の眸が私の姿を捉え、安心したように息を吐く。

 けれど、衣服をはぎ取られた私の惨状に、彼の顔に再び憤激が宿る。


「き、京介君……っ」


 私の双眸が映した京介君の姿。

 瞬間、恥も外聞もなく、幼子のように声をあげて泣きたくなった。


 嬉しくて。一気に安堵感に包まれて。


 京介君、来てくれた。

 私をまた、見つけてくれた。

 ホッと強張った身体から力が抜け、瞼の裏側が熱を持ち出す。


 突然部屋へと乱入してきた漆黒の男に、波のように男達がざわめいた。


「ま、馬淵の息子……狂犬か!! なんでこんなに早くコイツが来る!?」


 ――後をつけられてもいないし、そんなすぐに特定できる訳がない! 見張りはどうした!?


 男達は口々に疑問を口にしながら、京介君に驚愕の目を向ける。



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