Under The Darkness
「美里さんっ」
私の身体を守るように、抱きしめる力が増す。
シュンっと空気が突き抜けるような鋭い音がした。
トンッと、後ろから軽く背中を押されたようにして、京介君の身体が前に傾いだ。
「京介っ! チッ」
お父さんが拳銃を取り出し、構え、パンッと発砲した。
――え、なに?
今、凄くイヤな感じがした。
お父さんが発砲した先には、豪がいた。
京介君は平然とした顔で、壁際で蹲る豪を睨んでいる。
胸を撃たれ歯を食いしばったまま、豪はくぐもった呻き声を上げている。
憎しみに燃える赤く濁った豪の両眼は、お父さんと京介君を捉えたまま離さない。
豪の手から離れた拳銃がクルクルと円を描きながら床を滑り、止まった。長細い筒状の、何かを装着した拳銃。
私は恐る恐る京介君の背に手をまわしてみた。
何かを探すように、彼の背中に手を這わす。
イヤがるようにして、京介君は身体を捩った。けれど、構わず手を動かせる。
その手がピタリと止まった。
掌がじっとりと、生暖かい液体に濡れる感触。
スッと凍り付くような心地がした。
――ウソだ、ウソ。
私は震える掌を目の前に掲げた。
赤く染まった私の掌に、愕然とする。
目の前が真っ暗になる。
それはイヤだと激しく思った。
「京介君……アンタ、豪に撃たれた、ん?」
「平気です。素人に一発撃たれたくらいで、死にはしません」
――父さんは、すでに5回も撃たれてますが、まだまだ元気です。
悪戯な笑みを浮かべながら、そんなことを言う。
けれど、平然とした京介君の顔色が、みるみる蒼く染まってゆくのが分かった。
私を抱き上げる京介君の腕から降りようとするんだけど、京介君は拘束する力を強めるばかりで緩めてはくれなくて。
撃たれたくせに、私を抱きしめたまま。
束縛の鎖のように、私の身体に腕を絡ませる。