Under The Darkness




「京介、出るぞ」


 銃を構えながら、京介君を促すお父さんの鋭い声。

 お父さんの厳しい視線は蹲る豪の動きを捉えたまま。



「……ふふっ、憎い男に……やっと報復でけた。……美里、一緒に逝こう……」


 ゴホッと咳き込んだ瞬間、豪の口から血が溢れ出す。

 銃は豪の手から離れていた。なのに、一緒に逝こうって、どういう意味なんだろう。

 豪の放った言葉に不安を感じた私は、京介君の身体を守るようにギュッと抱きしめた。

 豪は俯せに倒れ込んだまま、掌に捲いた包帯から小さいリモコンのようなものを取りだす。

 それを見たお父さんは、驚愕に目を見開いて、


「京介ッ、美里ちゃんを連れて死ぬ気で逃げろ!」


 その言葉に、京介君は私を下ろすと、腕を掴んで一目散に走り出した。

 お父さんが豪に向けてさらに発砲する。豪の身体が、弾が当たる度にビクンと揺れた。

 発砲しながら、お父さんも扉の外へ飛び出した。

 
「……み、さ…と、おおおっ!」


 慟哭の声を上げる豪の声を背に、私は京介君に引っ張られながら出口に向かって走った。


「京介っ! 爆風が来るかも!」


 すぐ後ろを駆けるお父さんの声に、私は走りながら後ろを振り返った。


 その時、背後から迫るようにして蒼い閃光が迸ったんだ。



 直後、聞こえてきた大地を震わせるような低い轟音が、聴覚の全てを奪う。


 崖に突き落とされるようにして爆風に背中を押され、身体が持って行かれる。

 京介君の身体が私を包み込んだのが分かった。 

 低い体温の京介君の肢体が熱いと感じたのを最後に、私の意識はプツンと途切れた。






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