Under The Darkness



 がくがく震える私の頬に、京介君の頬が重なる。

 飼い主に擦り寄る子犬ような仕草に、ふっと身体の強ばりが解けてゆく。

 私を暴力で支配しようとした男だけれど、京介君の言葉にどうしようもなく安堵してしまう。

 きっと京介君くらい強かったら、私の心を今なお蝕むあの男も吹き飛ばしてくれそう。

 そう思うと、やっと普通に息が出来る気がした。

 ふと視線を戻すと、私を見下ろしていた男の姿が消えていることに気付く。


 身体の強ばりが解け、私は京介君にしがみついた。


「京、介君、京介君っ」


 京介君の額から、肩から、腕から流れる鮮血が、私の身体にぽたりぽたりと滴り落ちる。

 京介君の周りには、赤黒い血だまりが広がりを見せていた。

 私の身体が彼の赤に浸り、染め上げられてゆく。




 ――京介君が死んでしまう!?



 新たな恐怖が私を襲った。



「……京介君っ! 凄い血や! 怪我、どうしよう!」


 京介君が爆風から私を救ってくれたのだと、今更ながらに気付く。

 京介君の躰の下に潜り込んだ私は、彼の腕をガッシリと掴んで立ち上がった。

 京介君の体重に潰されそうになりながらも、足を踏ん張った。


 ――病院、すぐに病院に運ばなければ。彼を助けなければ。



 その思いに突き動かされ、慎重に一歩一歩、私は渾身の力で京介君を抱えたまま足を進めた。


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