Under The Darkness





「先に逃げなさい! ここは崩れる。……私もすぐに向かいますから。早く!」


 京介君の切羽詰まった声。

 私の身体が乱暴に振り払われる。

 はずみで、京介君の身体が地面にドウッと倒れ込んでしまう。

 駆け寄って京介君の身体に縋り付きながら、私は声を荒げた。


「バカにすな!! こんな場所に京介君置いていかれへん!! 一緒に逃げるで!」


「逃げろと言ってる! 行け!」


 その時、私の肩が掴まれる。

 爆風で顔が赤く腫れ上がった舎弟さんが、私の身体を荷物のように抱き上げてしまった。


「無事ですね!? 京介様、美里さんは私が運びます!」


 その声に、京介君は緊張を解き、ホッとした顔で頷いた。

 そして、私を抱えた舎弟さんは、背後にいる他の舎弟さんに、京介君を運び出すよう大声で指示を出した。


「京介君、京介君助けて、早く!!」


 出口から舎弟さんが一人駆け寄ってきて、倒れ込む京介君の腕を取り、肩に凭《もた》れかけさせて歩き出す。

 これで助かる。

 私は後ろの京介君をずっと見つめながら、そう確信した。

 けれど、私を抱えた舎弟さん、出口に向かい全力疾走するから、あっという間に京介君の姿が見えなくなって。


「京介君っ」


 私は不安になり京介君の名を叫んだ。


 建物から先に救出された私は、京介君と同じく満身創痍なお父さんに、「よかった!」と抱きしめられる。

 そして、入り口付近まで来た京介君を視界に捉えて、ホッと肩の力が抜けてゆく。



 その時、ゴゴゴッと大きな轟きが聞こえて来て。

 京介君の背後に紅い炎が迫っているのが見えた。


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