Under The Darkness
19
――その後のことは、ほとんど記憶にはない。
京介君に縋りつき離れない私を、舎弟さんが無理やり引き剥がし、ぐったりと動かない京介君だけを、別の車でどこかへ搬送してしまったんだ。
舎弟さんに抱きかかえられた私は、ずっと叫んでいた。
走り去る車へと手を伸ばして、枯れた声を振り絞って、京介君の名を叫んだ。
まだちゃんと京介君は謝ってないじゃない。
あんな謝罪は無効だ。
怪我が治って、元気になって、それからじゃないと受け付けはしない。
それに。
私に対して激しい執着を見せた京介君の、その根底にある心をちゃんとまだ聞いてはいない。
私に向けられた鮮烈なまでの独占欲や、私が危ない時、自らの危険をも顧みず助けに来てくれたこと。彼の根幹にある想い、それら一連の行動の起因となるもの。
京介君の言葉に、行動に、燃えて消し滓となり果てたはずの情念が、私の心の中で再び根を張り、芽吹いてしまったのに。
だから。
私から、まだ引き離さないで欲しい。
もうもうとした灼熱の砂煙に煽《あお》られながら、私は彼の名を狂ったように叫んだ。
暴れる私を抱き上げた舎弟さんは、パトカーのサイレンを避けるように裏道を抜け、暗い路地に横付けしていた別の車に私を乗せて逃走したんだ。