Under The Darkness



 目の前で首を裂いた母親を、京介君はどんな気持ちで見ていたんだろうか。

 私なら、間違いなく憎むだろう。

 母親を自殺へと追い込んだ原因となる存在を。

 そう考えて、疑問が湧く。

 京介君は何故、彼は私のことを助けてくれたのか、と。

 ほうっておいても良かったはずだ。

 消えた私を探し、わざわざ東京からやって来て、救いの手を差し伸べる理由などないはず。

 私なんて認知すらされてない愛人の子だ。

 戸籍上は他人。

 憎んでいるのなら、京介君はただ絶望に溺れる私の最後を、嘲笑の中傍観すれば良いだけのこと。


 ――憎いけど、それでも助けてくれたってことは、やっぱり京介君は優しい子なんやろか。唇は笑てても、いつも目だけは違う。爽やかな笑顔とは真逆の感情を浮かべてる。


 でも、それは不器用なだけで、本当は違うのかな。

 例え憎んだ相手でも、救いを求める人間を見捨てることが出来ない、異母弟はそんな優しい男なのかな。


 納得出来るような出来ないような、そんなモヤモヤとした気持ちを持て余しながら、沸き上がる疑問の声を押し殺した私は、きっと不器用な男なのだと無理やり結論付けることにした。


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