Under The Darkness
「3分です」
頑なに意見を曲げない京介君に、私は溜息を吐く。
まあ、ここは京介君の家なのだから、その家のルールに則らないといけないのかも知れない。
私はしぶしぶ頷いた。悠宇に連絡出来るだけでもありがたかったから。
プッシュする私の指をじっと京介君が見てる気がする。
私を刺す彼の視線が痛い。
「……番号、暗記してるんですね」
「あ、うん。記憶力はさっぱりアカンけど、悠宇と栞ちゃんのだけは覚えとるんよ」
そのまま京介君はじっとりと黙り込む。
なんだろう。今、何か気に障るようなこと言ったのかな。
コール音を聞きながら、私はそわそわしてしまう。
「なんで怒ってんの?」
「怒ってなどいません」
いや、絶対怒ってる。腹立たしいって、忌々しいって、目が完全に据わってる。
掛けた眼鏡の端が光を反射して、キランと光るのが怖さ倍増って感じでゾクリとする。
私は長い間、人の顔色をうかがって生きてきた。だから大体分かる。
私のことを疎ましく思っている人、危害を加えてやろうと目論んでいる人。
本能のようなものが察知して、私に危険信号を発するんだ。
京介くんにもそれを感じる。
他者にはきっと気付かれないだろう精巧に出来た偽りの仮面の下で、私のことを疎ましく思っているんだと。