Under The Darkness
『……もしもし』
電話の向こうから聞こえてきた懐かしい声にハッとする。
「あっ! 悠宇っ!!」
声が弾むのがはっきりわかった。
やっと聞けた悠宇の声に鼻の奥がツンと痛くなる。みるみる視界がぼやけ出してゆく。
『みっ、みぃちゃんか!? おまっ、今までどこおったんや!? ってかこの電話、市外局番03って……東京か!? 東京おんねんな!?』
今にも受話器を取りこぼしそうなほどに動揺した悠宇の声に、私は涙に曇った目を伏せた。
「ごめんな、心配掛けてもうて」
『今どこおんねん!? 東京のどこや!? オレ迎えに行くわ。今大阪やけど、新幹線で4時半くらいには着ける。どこおるんや』
「どこ? えと、どこやろな?」
私は振り返った。京介君にここがどこか聞こうと思ったのだ。
でも。
聞こうとした声が、喉の奥にひっこんでしまった。
――めっちゃ怖い顔で睨んでる。
視線で人が殺せるなら、きっと私、殺されてる。
そう思うくらい、眼鏡というフィルターがかかってさえいても、彼の双眸は恐ろしいほどの怒りを孕んでいた。