Under The Darkness




『どこって……、今どこおるんかわからんのか!? もしかして思ったけど……誘拐、か?』


 声を潜めた悠宇の問いに、一瞬言葉が詰まる。

 私は努めて明るい声で答えを返した。


「ああ、うん。そんな感じ。でも、東京おるんは違うねん。助けてくれた人がな、連れてきたん。今から大阪帰るから、わざわざこっち来んでもええで」


『誰や!? 誰に誘拐されたんや!! あっ、まさか……あのゴリラか!?』


 悠宇は豪の存在を知っていた。

 高校への通学も、悠宇のうちの方が駅から近いのに、わざわざ駅から遠い私の家にまで毎日寄ってくれるほど、豪の存在を警戒してくれていたんだ。

 躊躇ったが、私は正直に話した。


「……せや。アイツや」


 刹那、悠宇の唸るような慟哭の声が受話器の向こう側から聞こえてきた。


『っ! ……ちきしょっ! あああっ、ちきしょうっ!! アイツに違いない思ったんや! みぃちゃんおらんなって、心配で! オレ、ヤツんち行ったけど舎弟どもに関わるなって脅されて、警察にも行ったんや。絶対アイツに違いないて……っ! あのゴリラやて、みぃちゃんにつきまとうヤバいヤツやって、オレちゃんと言うたのに! でもヤツら、おざなりな調書だけで真面目に話すら聞いてくれん、探してくれんかったっ!!』


 ――ちきしょうっ。


 電話越しに、悠宇の嗚咽が聞こえてきた。

 私は俯いたまま、涙が止まらなかった。足元にパタパタと丸い滴が落ちてゆく。

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