Under The Darkness
「それと、一番気になったのですが。あの悠宇という男は、最後、貴女に何を言ったんでしょうね?」
「そんなんどーでもいい! 学校って、学校変わるって話、全然聞いてへんねんけど!?」
「父さんに聞いてませんか?」
「聞いてへん!」
「で? 最後、なんて言ってたんでしょうか」
あ、京介君、力業でハナシ戻した。
眉間に刻まれる皺がさらに深くなる。このままクセづいてしまいそうなほどだった。
そんなに気になるようなこと言ってたっけ? と、私は腑に落ちないながらも、取り敢えず答えて話を戻そうと考えた。
「確か、女装するから嫁にもらってくれへん? 的なこと言われた気ぃする」
「……そう。分かりました」
低く感情を乗せない声で、京介君は呟いた。
何が分かったのかさっぱりだが、問題解決とばかりに話を学校のことに戻そうと、私が口を開いたときだった。
「……目障りだな」
聞き逃しそうな程小さく、ヒヤリとする冷淡なその呟き。
私は目を瞠った。そんな私にちらりと目をくれると、
「さあ、美里さん。時間です。大阪へ行きたいのでしょう?連れて行ってあげますよ。――私が」
私の手を取った京介君は、唇に偽りの笑みを乗せ、ニコリと笑った。