Under The Darkness
「美里さん」
京介君の声。
その声に驚きが含まれているのを不思議に思って、顔を上げた。
「……それ」
それ? 私は首を傾げる。
何を言ってるのか分からなかった。
「手」
そう言われてハッとした。
私の手、京介君の服の裾を後ろから引っ張るようにして握りしめていた。
「あ! ゴメン! なんか……ちょっとビビってもうて……服シワになってまうね。ごめんなさい」
私は慌てて手を離し、謝った。
怖いことや嫌なこと、不安を感じるようなことがあると、私は傍にあるものを握りしめてしまう癖がある。
見慣れない極道さん達に圧倒されて、思わず隣に居た京介君の服を掴んでしまっていたようだった。
「いえ。それでいい」
「え?」
「これからはずっと。私だけを頼ってくれたらいいのですから」
いや、私は何を言われようとずっとここにいるつもりはない。だから、それはないだろうと強く思う。
けれど、何故か見たことがないくらい上機嫌な笑顔を見せる京介君の機嫌を損ねたくなかったので、私は曖昧な笑みを浮かべた。