Under The Darkness
「美里さんがここへは戻らないなどと言うからです。父さんは心臓が悪い。次に発作が起こったら死んでしまうかもと言われているんですよ。余命幾ばくもない。貴女はこのまま父さんが死んでしまっても良いとおっしゃるんですか。……斉藤! 侍医の田村さんを呼べ!」
京介君は私のせいだと言わんばかりに責め立てる。
そんな……。
バタバタと激しく出入りする人を呆然と見遣りながら、私はポロポロと涙を零した。
天涯孤独だと思っていたのに、私に優しいお父さんが出来た。
かなり怖いが、弟も出来た。
家族が出来た。
せっかくひとりじゃなくなったのに。
また、失うの?
目の前が真っ暗になるようだった。
掻き毟るようにして胸を押さえるお父さんの手の甲に、白い健が浮き上がっている。
呼吸さえ出来なくなるほどに苦しんでいる。
何を言ったら父さんを安心させてあげられる?
何を?
私の疑問に、京介君が答えた。
「貴女がずっと、ここにいると約束すればいいんですよ」