Under The Darkness
――そうすれば、父さんは安心してあの世に逝けます。
その言葉にドキッとした。
死んでしまう?
お母さんみたいに、いってきますって言ったっきり『ただいま』の言葉を二度と聞けなくなったように?
身体がガクガクと震え出すのが分かった。
お父さんを見ると、苦しげに片目を開けて私を見てる。
私は何も考えることなく答えを返していた。
「わかった。ここにおるから……っ。帰ってくるから、死なんといて!! お願いやから……っ!!」
うわーっと声を上げて泣いてしまう。
もう、知っている人を失うのはイヤだった。耐えられないと思った。
まして、それがお父さんなら尚更だった。
その時、苦しげに震えていたお父さんが、ガバッと身体を起こした。
「えっ、ホント!?」
その顔は嬉々として、さっきまで青白かった頬が紅潮してさえみえた。
「え」
涙を流したまま、きょとんとしてしまう。
「……父さん?」
凍えるほどに冷たい京介君の声。
お父さん、ハッとしたようにビクッと体を揺らして、嬉しげだった顔が青菜に塩を掛けたようにしなしなと頼りなげなものに変わる。
「うぅ……もう、ダメかも……」
刹那、グハアッと、お父さんの口から血が飛び散った。