Under The Darkness
「きゃ―――っ!! お父さん!?」
口から血を滴らせるお父さんの身体を抱きしめながら、私は絶叫した。
「……美里さん、ひっつきすぎだ。父さんから離れなさい。新幹線で行くのでしょう。遅れますよ」
京介君が私の肩を掴み、ベリッとお父さんから引き剥がしてしまう。
「新幹線って、なに言うてんの!? お父さん、お父さん死にそうやないの!! 大阪どころやないやない! お父さんっ、お父さん!」
お父さんの所へ戻ろうとする私を羽交い締めにした京介君は、呆れた溜め息を吐くと、
「……暴れるな。本当に貴女は疑うと言うことを知らない。危なっかしくて見ていられません」
と、意味深なセリフをボソリと呟いた。
「なに訳分からんこと言うてんの! 京介君は心配違うの!?」
「こういうのは慣れてますので」
ケロリとした様子で、何でもない調子でそんなことを言う。
私はこの非常事態になんて薄情な息子なのかとカッとした。