Under The Darkness
「おおおっ!! 美里ちゃんも戻ってきてくれるって約束してくれたし、幻のかわ坊主も手に入るし、……我が人生に、悔い、な……し」
恍惚とした表情で、お父さんはガクリと首を垂らす。
驚いた私は、お父さんに手を伸ばそうとして、ハッとした。
私、無意識にまた彼の服の裾をきゅっと掴んでしまっていたんだ。
慌てて手を離し、お父さんの元へ駆け出そうとする。
が、京介君の腕が私の身体に回ったまま、拘束を解いてくれなくて。
暴れる私の身体を、京介君が両の腕《かいな》で逃がさないとばかりに強く押さえ付ける。
「お父さん! ちょ、京介君、離してっ。お、お父さん、気ぃ失ってもうた! どうしよう!?」
パニックを起こしてしまう。
田村さんに支えられながら、お父さんは目を閉ざしたまま、力なく身体を弛緩させていて。
どうしよう、どうしよう! せっかく父親と呼べる人に逢えたのに、こんなにも早くさよならなんて絶対イヤだ!!
めちゃくちゃに暴れる私を背後から抱きしめた京介君は、『大丈夫』というように、ポンポンと私の腕を軽く叩いた。
「これ以上はダメです。ご心配なく。明後日には完全に復活しているはずですから」
だから、もう行きましょう。そう促しながら、京介君は私を軽々と抱え上げてしまった。
「え、えっ、ちょっと、え? あ、あ、お父さ――ん!?」
「あ、週明けまでには必ず戻ってらしてくださいねー」
侍医の田村さんがフリフリと手を振るのを視界の端に捉えながら、力なく横たわるお父さんの姿がだんだん遠くなってゆく。
横抱きに抱えられたまま、私は京介君に連れられて、数人の舎弟さん達と共に黒い高級車の中へと押し込められてしまった。