Under The Darkness






 私は絶対にあの家に戻らねばならない。

 私と接しているときは病気なんて微塵も感じなかったのに、そんな大病を患っていたなんて思いもよらなかった。

 お父さんの身体のために――今居る学校を離れてしまうことになっても、悠宇や栞ちゃんと頻繁に会えなくなっても、淋しくても、それでも、なんとしてでも。


 私はあそこに戻らねばならないと思った。


「……うん。ちゃんと戻る。お父さん心配やから……」


 昏く沈んでゆく気持ちを持て余しながら、こくりと頷く。

 そして、京介君に促されて前を向いた、その時。

 私はまた彼の服の裾を掴んでいることに気付き、慌てて手を離した。

 すると、ムッと京介君の顔が曇る。


「何故離してしまうんです? 不安なら、ずっと掴んでいたらいいのに」


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