Under The Darkness
京介君と舎弟さん5人と共に、東京駅から新幹線に乗り込み、つい今し方、新大阪の駅に着いた。
新大阪についてすぐ、私は京介君にスマホを借りて馬淵の家に電話を掛けた。
お父さんの様子が気になって仕方なかったから。
電話に出た舎弟さんは、『もう元気っすよ』とさらりと答えた。
そして、舎弟さんから電話を奪うようにして、お父さんが出てきた。
少し呂律が回らないような口調で、
『淋しいよぉ、早く帰ってきてぇ、美里ちゃーん。そうしないと、パパ、心臓が今にも止まってしまうかも知れないよぉ』
頼りなげな声で切々と訴えてくる。
いつもと違う弱々しいその口調に、また目頭が熱くなり、鼻の奥がツンと痛くなる。
隣でじっと私を観察する京介君に、溢れ出してきた涙を見られまいと、私はそっと顔を伏せた。
「うん、すぐ戻るから、あんまり無茶せんといてな、お願いやから」
『うん、うん。淋しいけど待ってるから。でも、3日ももたないよぉ……』
「っ!! わかった、アパートからお母さんの遺影と、それと大事なもん持ってきたら、すぐ戻るから!」
私が言い終わる前に、お父さんの「あっ、何をするっ!」っていう怒号と、「すぐ返すから」と宥める声が聞こえてきて、別の人間が電話口に出てきた。
『美里さんですね。僕は主治医の田村です。組長の口調がおかしいのは、心筋梗塞で倒れた際、頭にも少し障害が残ってしまったからなのです。決して酔っているわけではありません。勘違いなさらないように』
私は、「そんな……障害が残ってしまったなんて……。田村さん!! お父さんのこと、くれぐれもよろしくお願いします!」そう言って頭を下げた。