Under The Darkness





「腹の内見せへん、嘘の笑顔ばかり浮かべるような油断ならん人間とは、仲良く出来へんっ!! この手、さっさと離しい!!」


「嘘の笑顔?」


 京介君がハッと目を見開いて驚きを露わにする。

 それを見て、私はさらに言い放った。


「そうやん! 唇だけ笑てるけど、目ぇ全然笑てないやないの! 京介君の目が言うてる。私の事、忌々しい、疎ましい、嫌いやて!」


 私が放った声は、完全に涙声だった。

 自分で言って哀しくなる。

 独りになった私に出来た家族。けれど、私は弟に疎ましく思われている。嫌われている。その事実が、哀しくて辛い。

 驚く京介君の顔が、ゆっくりと含み笑うようにして歪んでゆく。そして、肩を揺らせて嗤いだした。


「くくっ、凄いですね、美里さん。大体、私の上っ面だけで皆面白いほどに騙されてくれるんですが。……貴女、どうやら最初から気付いていた様子でしたからね。美里さんのことを少し侮っていたようです」


 心底楽しそうに京介君は笑い、今までの自分は作り物だと暴露する。


「仰る通りです。私が見せる笑顔は、全て嘘」


 ヒクッと喉が鳴った。


 ここまで正直に告げられてしまうと、何も言えなくなる。

 呆然と目を見開く私に、京介君、一見爽やかに見えるだろう笑顔を浮かべながら、


「でも、私が貴女を『嫌い』という部分は間違っていますね」


 そう言うと、眼鏡のブリッジを中指でクイッと押し上げながら、にやりと嗤った。

 そして、嘘で塗り固められていた仮面を外したんだ。



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