Under The Darkness
「本当に驚きました。蘭奈さんが亡くなったと聞き、貴女の元へ舎弟を向かわせたのですが、まさかあんな男に囚われているなんて……。助け出すのに時間がかかってすいませんでした。……それだけが悔やまれる……。でも、安心してください」
憎々しげに歯噛みしたと思ったら、京介と名乗ったこの男は、次の瞬間、にこりと穏やかな笑みを浮かべて、
「あの卑劣極まりない男の顔を、貴女の眸が映すことは、もう二度とありません」
意味深な言葉を発した。
「え? それってどういう」
「関西の、それも下っ端の組に所属していただけのルールも知らぬ分際で、川口組の組長である父の娘、そして、私の姉に乱暴を働いたのです。それ相応の報復はさせて頂きました」
――貴方、何をしたの。
その問いは、発することが出来なかった。
聞くことは許さないという冷たい雰囲気が彼の全身から伝わってきて、私から言葉を奪ったんだ。
「これからは、ここ、馬淵の家が貴女の家です」
京介君は、嬉しそうににっこりと微笑んだ。