Under The Darkness



「ふ、可愛くない。その生意気な目が気に入らない。愛人の子らしく自分の母親を見習って、男に媚びて見せたらどうだ」


 私を、ママを、貶めるその言葉に、一気に血が逆流する。激しい怒りに視界が赤く染まった。


「ママを侮辱するなっ! 何も知らんくせに!」


 私の言葉に京介君は、ハッと嘲るように鋭く息を吐く。

 彼の双眸が、はっきりと分かるほどに憎しみに歪んでいた。


「……何も知らないのはお前だろう。何も知らずただ安穏と無邪気な笑みを振りまく、蘭奈とお前こそが毒。その毒に冒され母は狂い死にした。父さんに連れられ、過去何度かお前を見に行ったが、その度に再認識させられたよ。――私はお前が憎いんだと」


 私は京介君の心の闇を垣間見た気がして、強い憎しみの感情を向けられて、ゾッと悪寒が走った。


「安穏に微笑むお前の日常を、私が破壊してやる。そのために助けたのだから」


 クククッと昏い瞳で私を貫きながら、京介君は嗤う。


「お前をめちゃくちゃにしてやる」


「……外道っ……」


 私は引き絞るような声で叫んだ。


 京介君は私達母子を憎んでいる。

 彼の心が過去に縛られ血を流している様が見えるようだった。

 惨劇を目の当たりにした京介君の苦しみは、終わってなどいない。私を彼の母のように、苦しめて、貶めるまでは。


 ――でも。


 私はそれを許容することは出来ない。

 ここで屈するわけには行かなかった。


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