この恋、国家機密なんですか!?


「でも私、宗……元カレと結婚したかったのであって、結婚自体がどうしてもしたかったわけじゃ……」


自分で言いかけて、はたと止まってしまった。

結婚自体が、どうしてもしたかったわけじゃない?

それって、私の……。

それが、私の、本当の気持ち?


宗一郎さんとの未来を夢見ていたことは確かだけど、『結婚』だけが目的じゃなかった?


「……自分を幸せにしてくれるなら、誰でもいい。そういうわけじゃないみたいね」


お母さんはなぜか、苦笑していた。

昔、私が高校で部活の仲間に嫌なことを言われても、ひとつも言い返せなかった。

そう報告したときの顔を思い出した。


「バカねえ……そう言えば良かったのよ」

「……」

「結婚なんかしてくれなくてもいいから、その彼と一緒にいたいって、言うべきだったのよ」


優しげな声に、じわりと涙がにじむ。

それは、普通の信頼関係が気づけていれば、そう言えたかもしれない。

だけど、住所もアドレスも教えてもらえない私は、確実な約束だけがほしくて。

結果……置いていかれてしまった。


< 102 / 214 >

この作品をシェア

pagetop