この恋、国家機密なんですか!?
「……なにもっ、何もしらないくせに。彼と私の間にあったこと、なにも……」
思わず感情的になってしゃくりあげてしまうと、お父さんが立ち上がり、優しく背中をなでてくれた。
「そうだよな、唯ちゃんたちのことは、唯ちゃんたちにしかわからないよな」
「あなた、娘を甘やかさないの!」
「だって、可哀想じゃないか。唯ちゃん、こんなに傷ついて……」
──バン!
テーブルを思い切りたたく音が、お父さんの反論を封じ込める。
「あのねえ、恋をしたら傷つくのは当たり前なの!産まれ育った環境の違う人間同士が一緒にいて、同じ人生を歩もうとするんだから。そりゃあ色々あるでしょうけど、その障壁を乗り越えていかなきゃ、先はないのよ。そのためには、たまにはケンカしなきゃ」
ケンカ……。
そういえば、私たち、あまりケンカをしなかった。
不安でも、寂しくても、自分が我慢していればいいやって。
怒らせて、別れちゃって、一人になるよりはずっといいやって……。
「あんたは昔から、言いたいことを言わない子だったから……。あのね、いくら年上でも、相手はエスパーじゃないのよ。言わなきゃわからないんだから」