この恋、国家機密なんですか!?


ああ……うらやましいな。

どうして、似たような遺伝子を持っているはずなのに、私とお母さんはこうも違うんだろう。


「人生経験の差、かしらん……」


それにしても、ずるい。

自分だけ、あんな素敵な旦那さん捕まえて。


お母さんは『私のお母さん』じゃなくて、いまだに『一人の女』として、人生をいきいきと生きている。

きっとお母さんの一番大切な人はお父さんであって、お父さんの一番大切な人は、お母さんだ。


「ああ……そっか」


だから、私は寂しいんだ。

実の親でさえ、自分自身の人生を生きている。

そう、この世には誰も……。

『唯のことが、誰より一番好きだよ』

と言ってくれる人が、いない。

だから、マキさんも悲しかったんだ。

旦那さんの一番が、マキさんじゃなくなった。

たぶん、マキさんのご両親の一番は、孫……マキさんの子になってしまったんだろう。

それが、大人になって、自分の世界を築いていくってことなんだ。

大人はみんな、孤独なんだ……。

その中でも、自分の大切なものにしがみついて離さない努力をして、生きていかなきゃいけないんだ。



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