この恋、国家機密なんですか!?
車道の横、歩道の脇にはコンビニや飲み屋さんが並んでいる。
その通りを、グレーのスーツの人が、歩いていた。
すらりとのびた手足。短く切られた、黒髪。
「宗一郎さん……!?」
似てる。
後姿のその人を目で追いかけ、思わず歩道橋の手すりから乗り出してしまった。
「宗一郎さーん!」
叫ぶけど、そのひとは一度もこちらを振り向かなかった。
私は慌てて、あとを追う。
コンビニの袋を提げたまま、歩道橋を猛ダッシュした。
もう、寒さは忘れていた。
陸上部の元エースの実力をここで発揮しないでどうする!
私は十何年ぶりに、全速力で駆けた。
もう忘れていた風を切る感覚を思い出しながら、階段を降りる。
そして、あと1段で地上というところで……。
「わっ、わ、ぁ、ぁ……っ」
気持ちに体がついて来なくて、ぶざまに大転倒した。
橋が凍結しはじめていたみたい。
「いった……っ」
強く打った膝を見ると、デニムが破れて、下にはいたあったかタイツも破れて、血がにじんでいた。
そんな私の様子を見て、横の飲み屋から出てきた男女が、くすくすと笑う。