この恋、国家機密なんですか!?


暗い路地に、自分のブーツがこつこつと鳴る音が響く。

そのとき、スマホがぶるると震えて、私は立ち止まってそれを取り出す。


「メール?あ、マキさん」


どうやら里枝と涼子に、私が宗一郎さんと別れたことを聞いたらしい。


『私を仲間はずれにするってどういうこと!?心配だから、いつでも連絡ください』だって。


自分も大変なのに、優しいなあ……。

じーんとしていると、何も物音のするはずのない路地から、音がした。


──じゃりっ。


地面を踏む音?

私は思わず、振り返ってしまった。

その目の前に……メガネとニット帽の、知らない男の人が、いた。


「……っ!」


逃げようとした瞬間、腕をとらえられる。

強い力で無理やりに引っ張られると、近くのビルの壁に背中を押し付けられた。


「った……っ」


恐怖より先に、腕と背中の痛みが私を襲う。

目を開けると、全く嬉しくない壁ドンの体勢で、男が私をにらんでいた。

え……ちょっと待って。

ストーカーは捕まったはずなのに!

この状態はなに?

それ以降はパニックになってしまい、何も考えられなくなった。



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