この恋、国家機密なんですか!?


「大声を出したら、殺すぞ」


低い声でそう言われて、震えた手からスマホが落ちた。

自分の状況が把握できなくて、ただ震えるだけの私に、彼は質問した。


「篠田宗一郎はどこにいる?」


え……どうして宗一郎さんの名前が?

一昨日別れたばかりの彼の顔を思い出すと、少し冷静さが戻ってくる。

怖いけど、なんとかして逃げなきゃ……。

ああ、さっき無駄な体力使うんじゃなかった。

後悔、先に立たず。


「おい、聞いてるのか?」


いら立った声で言われ、慌てて返事をする。


「しりません」

「知らないはずないだろう。お前が篠田の女だってことは、わかってるんだ」


ええ……と?ということは、何?

この人は宗一郎さんの居所をつかみたくて、私を壁ドンしてるの?

私自身を狙っていたんじゃなくて、宗一郎さんに用があるんだ。

いったい何の目的で?

疑問はあるけど、とにかく怖いから、なんとか解放してほしい。


「すみませんが、私はつい先日、宗一郎さんとはお別れしました」

「なっ……正直に言わないと、命がないぞ!」


正直に言ったのに、目の前の男は眉をつりあげる。困った……。


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