この恋、国家機密なんですか!?


むぐぐ……苦しい……。

必死で鼻呼吸をしていると、男はため息をついた。


「なんだよ……あてが外れたか」


そうだと思いますよ!

わかったなら、早く解放してよ……。


「……けど、人質として利用することはできそうだな。警察を脅すにはちょうどいい」


男は仏頂面のまま、片手で私の手をつかんだまま、もう片方の手でスマホを取り出す。

も、もしかして、仲間を呼ぶつもり?

やばい、車に乗せられちゃったら、一巻の終わりだ。


「だっ、だれか……!」


声を出そうとしたら、ぐいっと手をひかれた。


「騒ぐなっつってんだろ!人質より死体になりたいのか!」


ど……どっちも、いやぁぁぁぁぁ~!!

だらだらと、冷汗がこめかみを伝う。

ケガをした膝は震え、とても走り出せそうにない。

どうしたらいいんだろう。

もうこのまま、人質になるしかないのか……。

って言うか、なんのための人質なの?

人質ってことは、この人たちは警察と何か交渉をしたいということだよね。

いったい何者なの?

恐怖と疑問がぐーるぐーると頭の上を回る。

ちょっと気を失いそうになったとき、突然私を呼ぶ声がした。



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