この恋、国家機密なんですか!?
「唯さん!」
……この、素敵なバリトンボイスは。
「高浜さんっ?」
声のした方を振り向くと同時、風のように走ってきたのは、二人の影。
目の前の男がポケットの中を探り、中身を出そうとする。
その前に、大きな影が男に体当たりした。
男はポケットに手を突っ込んだまま、しりもちをつく。
「大西、頼んだ!」
「はい!唯ちゃん、こっちへ!」
男に当身を食らわせたのは、やっぱり高浜さんだった。
一緒に現れた大西さんが、私の手をひく。
「ま、待って、いったいどこへ……」
「決まってるだろ。きみを安全な場所へ退避させる!」
「でも、高浜さんひとりじゃ……あの男、仲間がいるかもしれないの!」
「えっ?」
何歩か走った大西さんが急に止まるから、私は彼の胸に飛び込むようにぶつかってしまった。
「こちら大西。マルタイと容疑者を発見。至急、応援を頼む!」
大西さんはシャツのエリにつけられた、小型マイクに向かって話した。
この前と同じスーツを着ているけど、耳には透明なコードがついたイヤホンがついている。
「高浜さん!敵は複数かもしれません!無理しないでください!」