この恋、国家機密なんですか!?


大西さんが叫ぶと、いつの間にか男をうつぶせに押さえつけ、手錠をかけた高浜さんが顔を上げる。

彼らSPの任務は、犯人の逮捕じゃない。

だけど高浜さんは、その場から動こうとしなかった。


「このまま放置はできない。大西、先に唯さんを安全なところへ!」


高浜さんはその長い腕で男を押さえつけたまま、片手で彼が落としたスマホを拾った。


「勘弁してくれよ!俺は何もしらな……」


男が半泣きのような声で、許しを請う。

その瞬間だった。


──バシュッ!


まるで布団を思い切り殴ったような鈍い音がして、高浜さんの手から、スマホが飛んだ。


「な……っ!?」


大西さんが驚きながらも、私を壁際に寄せ、守るように前に立ってくれる。


「スナイパーだ!」


高浜さんが手首を押さえて、あたりをぐるりと見回す。

それが大西さんの脇から、少しだけ見えたと思った、刹那。


──バシュッ!


また、同じ音がした。

だけど今度は、それだけじゃなくて……。

びちゃりと、水をバケツでぶちまけたような、そんな音まで聞こえた。

大西さんの背中がびくりと震えたのがわかる。

何があったの?

思わず彼の背中から顔を出そうとした瞬間、大西さんが振り向き、私の頭を強く抱き寄せた。




< 115 / 214 >

この作品をシェア

pagetop