この恋、国家機密なんですか!?
「見ちゃダメだ!」
って……、え……?
「大西っ、撤退だ!」
「はい!」
大西さんは私を解放し、手をつないで走り出す。
すぐそのあとを、高浜さんが追い付いてきた。
「……ひ……っ!」
ちらりと彼の方を振り向くと、息が止まりそうになった。
だって高浜さんは……まるでホラー映画みたいに、全身が赤黒い血でベタベタだったから。
「特殊班全員に連絡。容疑者が撃たれた」
高浜さんのバリトンボイスが、闇夜に響く。
よ、容疑者が……?なんで?
「近くに狙撃手がいると思われる。十分注意しろ。マルタイは無事だ」
高浜さんは厳しい顔でマイクに向かってそう言うと、私に気づいてにこりと笑いかけた。
「大丈夫です。もう少しで、味方の車に合流できますから。決して後ろを振り向かず、そのまま走って」
あの……私を安心させようとしているんでしょうか……。
逆に血まみれで笑われると、怖いですからー!!
私はそれ以上後ろを振り返る勇気はまるでなくて、高浜さんに言われた通り、前だけを見て走った。