この恋、国家機密なんですか!?
side宗一郎
唯に別れを告げたあと、俺はすぐに帰り支度をし、旅館をあとにした。
彼女はその間、魂が抜けたようにぼーっとしていたが、俺はそれを見ないふりをした。
唯のことは、姉さんに頼んである。
きっと大丈夫だろう。
思った通り、次の日に姉さんから連絡があった。
『唯さんは無事に京都駅まで送り届けたわよ。運転手によれば、彼女、ちゃんとお礼を言って帰っていったんだって。しっかりした人ね』
『そうか……』
『宗一郎さん……あの人になら、本当のことを話しても良いんじゃなくて?』
出た。姉さんのお節介だ。
『いや……もう終わったことだから』
正しくは、俺が一方的に終わらせたのだが。
『……そう。でも相手を傷つけたのだから、あなたなりに償いはしなさいよ』
姉さんはそれ以上何も言わず、電話を切った。
償い……か。
たしかに、償うべきだろうな。
彼女が、『いつかは結婚したい』と思っていることには気づいていた。
俺はその気はないのに、唯を手放すことができなかった。
俺のわがままだ。