この恋、国家機密なんですか!?


そうなんだ……。

誰かひとりくらい休んで、そばにいてあげられればいいのに。

お仕事が忙しかったり、地方に行っちゃってたりすると、簡単にはいかないのはわかるけど……。

少し寂しそうなご婦人は、そういえば、と勝手に話題を変えて話し続ける。

私はお弁当を食べながら、それを聞いていた。

いつものわけのわからんクレームに比べれば、世間話のなんと楽なことか。


「そういえばあなた、5~6年前の大きなテロ事件って覚えてる?」

「はい?ええと……どこで起きたやつですか?」


テロなんて、いつでもどこでも世界中で起きているから、全部は覚えていない。

宗一郎さんと出会う少し前に、どこかのテログループが地下鉄の駅に爆発物をしかけて大騒ぎになったことは覚えているけど……。

5~6年前って、何があったっけ?


「あれよあれ、なんとか教ってカルト教団が、人質をとって都庁にたてこもったじゃない。あのとき、警察と教団が衝突して、双方にけっこうな死傷者が出たのよ。一般人も巻き込まれて……可哀想だったわ」


心の底から気の毒そうに言うご婦人の顔を見ていて、やっと思い出した。

そのニュースは大きな影響を社会に与えた。

連日連夜、そのことばかりテレビでやっていたから覚えている。


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