この恋、国家機密なんですか!?
10.緊急出勤と私
翌朝、おにぎりだけの朝食を済ませると、突然スマホが鳴った。
スマホは昨日、高浜さん経由で帰ってきたもの。
もしかしたら宗一郎さんが持ってきてくれるんじゃないかな~と思っていた私の淡い期待は、見事に裏切られた。
まあ……高浜さんみたいに血みどろじゃなかっただけ、良しとしよう。
「もしもし?」
それは勤務先からの着信だった。
無視するわけにもいかないし、一応話は聞いておこう。
とうとうクビかな~。あはは~。
『もしもし、唯ちゃん?』
「え、あ、マキさん?もう出勤してるんですか?」
『そうなのよ。で、休職中なのはわかってる上で、お願いがあるんだけど!』
え、なに?
嫌な予感が、つま先から頭のてっぺんまで、ぶわーっと鳥肌を立てる。
マキさんは事務要員でパートとして入ったはずで……。
それでお願いってなんだろう?
「な、なんでしょうか……」
『お願い!今日、出勤してもらえない?』
「はいぃぃっ?」
今日、いきなり?なんで?
『あのね、長野支店からの話なんだけど、今朝あっちを出発したツアーの添乗員が、どうしても体調不良で動けなくなっちゃったの。もう高速乗っちゃったあとでしょうがないから、こっちまでは来るらしいけど、現地で交代してくれないかって』