この恋、国家機密なんですか!?


さあっと、自分の顔から血の気が引くのがわかった。

男の人は鋭い眼光で一瞬こちらを射抜き、すぐに騒ぎの元となった男の人に視線を移す。


「もうやめろ」


たった一言。

それしか彼は言わなかったのに、お酒にこだわっていた男はおびえた顔で黙る。


「すみません、篠田さん」


酔いがすっかりさめてしまった顔で、男の人は篠田と呼ぶその人に謝った。


「謝るのなら、この人に謝れ」


篠田さんは私を指さす。

すると男の人は、しぶしぶといった顔で私に頭を下げた。


……頭にくるなあ。

自分より弱い立場の人にしか強く言えない男って、大嫌い!


でも、相手はお客様。

私は笑顔で謝罪を受け取り、篠田さんに向き直る。


「申し訳ありませんでした」


よく見れば、彼のお膳の上の料理にまでお酒がかかってしまっている。


「すぐにお取替えします!」


慌てて立ち上がると、私に次いで篠田さんもゆっくり立ち上がった。


「いや、あらかたいただいたのでもう結構。それより着替えるから、新しい浴衣を用意してほしい」


「……あっ、はい、承知しました!」


私はすたすた歩いて部屋を出ていく篠田さんの後をついていった。








< 14 / 214 >

この作品をシェア

pagetop