この恋、国家機密なんですか!?


ぽかんと見上げる私を見て、篠田さんはふっと笑った。
底意地の悪そうな顔で。


「俺に」


にやりと笑う彼は、悪魔以外の何者でもなかった。

ううん、悪魔みたいに、目に見えないけれど抗えない力を持った人。


「へ……」

「俺はあんたみたいに、でかい女が嫌いじゃない」


なのになぜか、自分の周りは小さい女しかいない。

彼はそう言って嘆いた。

私は、ぼんやりと、高浜さんに手を引かれるちいさな彼女を思い出す。

男の人はみんなああいう守ってあげなきゃ系の女の子が好きなのかと思ってた。


「きっと、気があうと思う」


彼はそれだけ言うと、すたすたと宴会場に戻っていく。

私はほんの少しぼーっとしていたけど、すぐに彼の後を追っていった。


久しぶりに、男の人に口説かれた。
正しく言えば、誘われただけなんだけど。

たったそれだけで、仕事の疲れしかなくてひび割れていた心に、すーっと水がしみわたっていくような気がした。


小さな恋が、芽を出した瞬間だった。


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